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高架下のコーヒーと青い空
昼休みの高架下は、エアコンの室外機と列車の駆動音が溶け合い、都会特有の低い唸り声をあげていた。灰色のアスファルトが膨らむ熱を跳ね返し、その上を歩く人々の影がめまぐるしく交差する。広告代理店で働く花は、弁当を作る余裕もなく、このところ毎... -
短編小説 「畝(うね)を越えて」
1 都会のバス停で 梅雨の切れ間。東京の曇った空を見上げながら、佐々木 拓也(ささき たくや・52)は、息子の拓真(たくま・17)と娘の志穂(しほ・15)のことを思い浮かべた。――今ごろ、ふたりは塾か部活か。別れて暮らす子どもたちの時間は、いつも自...
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